2019-07-16 (Tue)
なかなか京都御所から抜けられません。このままではニッチな世界をひたすら突き進んでしまう・・・。などと多少は思いますが、「思えば遠くへ来たもんだ」というのが心境です 笑。後、二か月もあれば動画も含め御所の「第一期3D制作」が終えるかな、です。本日は、長橋局の内部を中心に3DCGが出来上がりましたのでアップしようと思いましたが、悪い癖で天井の事とか書き出して、それで一記事に纏まりそうなので3DCGは次回に譲ります。いつもながら予定は未定で申し訳ないです。
が、その前に参内殿エリアと帝の御常御殿廊下を結ぶ御幸廊下(二筋廊下)の意匠を変更しましたのでそれから先に説明します。今までのは帝が通られる廊下として高級感のあるものに心掛けてきましたが、この二筋廊下は帝は通られない(おそらく)ので仕様を下げました。現存する同廊下に合わせました。というか、実際に見たことはないので細部は不明ですが取り敢えず修正しました。なお、屋根はどちらも杮葺き。当初は檜皮葺きでした。
当初、檜皮葺でした。
で、今回の変更前 ↓
さらに変更後 ↓
どんなものでしょうか?一応、差別化しました。御所は雲上人が一般の者の眼に触れないよう様々な仕掛け、長押塀等で分けていましたが、とくに帝の場合はいかに御隠しするか・・・、その辺、徹底しています。二筋廊下というのは廊下内部が真ん中の壁で分れ二本の廊下が並走しています。身分の上下に応じてです。御所はこのタイプが結構あります。身分の低い者などすれ違う時にいちいち平身低頭しなくてもいいからかえって良かったかもです。
御所を3Dで作る過程で最近になって天井の仕様が気になり出して来ました。一つのきっかけは長橋局の内部を作っているときに感じたこと。「三間からなる華麗な襖絵や床・違い棚等の格式ある長橋局なのに、なぜ、天井は格天井等ではなく普通の竿天井か?」と。そこには何となく御所の格式分けの極意みたいなものを感じ取ったからです。今までは折り上げ格天井などの高級な天井は「見せる」ことを前提に作ってきましたが、その他の天井は死角で映ることも少ないので単純な「竿縁天井」で護摩化してきました。竿天井といえば現在でも木造和風住宅に使われています。
で、御所の指図に天井の仕様も載っていたりして、そこには格天井は当然として普通の部屋などでも、”平縁”とか”竿縁天井”、”猿頬”とか分けて書いてあるので流石に気になってきて、今更ながらですが天井、とくに竿縁天井について少し勉強してみました。そこで理解できた事などで図で説明してみたいと思います。
まずは竿縁天井の種類から、
御所では上記の三種類の竿縁天井を使い分けています。
これを、素材的に表現すると、
違いが分かりますか?両方とも竿のような細長い棒木で天井板を支えていますが、左の竿縁(平縁)天井が最も一般的なもの。竿縁天井といえばほぼコレです。で、右の方ですけど竿棒の断面が先っぽでトリムしてあります。その形が猿の顔に似ているので「猿頬天井」と言うのだそうです。確かに猿に似ていなくはないですけど。この”猿頬”の方が立体的で格上です。今回、その違いを3D素材でも作り分けてみました。どうですかねぇ・・・お猿さんの方が高級感でてますか?
こんな風に天井もやっと差別化して参りました。折角ですので幾つかバリエーションをアップします。
順番に格下から紹介します。
一般的な竿縁(平縁)天井です。
次に、
出ました。猿頬天井です。
後はもう格天井に移ります。
もっとも一般的な格天井。格子の升ごとに板の木目を変える板違い等のものもあります。
格天井の升目にさらに細かく組子を組んだタイプ。
そして、
折り上げ格天井。皇后御常御殿や参内殿等。
最上級の帝のお常御殿の御座の二重折り上げ天井。
帝、将軍の間などは二重の折り上げになっています。将軍家ではこれに金箔や漆、絵など豪華に飾り立てていますが御所の場合は素木のままです。何回も書いてきましたが御所が不如意だったからのではなく朝廷、帝のご所望だったからです。江戸時代を通じて帝の御座の間は殆ど素木です。例外的に上皇の仙洞御所には絵を描いた彩色の格天井が存在したこともあります。どうもご皇室の場合、天皇は質素、清浄に、上皇は禁足が解かれたごとく自由になられる面があるようです。院政期などその典型ですよね。いわゆる諸外国にみる王権に近いと思います。
昔から日本の朝廷では天皇の玉体には触れてならない・・・という暗黙の決まりがあって、病気になられても御医でさえ直接触れるのは憚られたほど。ですから持病に悩まれた天皇は早く譲位し「上皇」になることを希望されたとか、院政期は、まさに、その上皇になってからが”権力の本番”という側面があったと思います。
ちなみに江戸時代の御所の天井の変遷については建築史学者の『後藤久太郎』氏が先行して論じられています。(近世建築指図の総合的研究、近世初期上層公家の遊興空間)。
それでは次回は長橋局の中へ入っていきます。
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天井 * by 五反田猫
いつも詳しい話を有難うございます。
なるほど、竿縁にも種類があり、猿頬ですか。
格子欄間にも良く合って、御所や書院も雰囲気が出ますね。
そういえば、建築用語には動物の名称が多いですね。 千鳥格子もあるし、螻羽、鯖の尾に懸魚など。 これからも楽しみにしております。
なるほど、竿縁にも種類があり、猿頬ですか。
格子欄間にも良く合って、御所や書院も雰囲気が出ますね。
そういえば、建築用語には動物の名称が多いですね。 千鳥格子もあるし、螻羽、鯖の尾に懸魚など。 これからも楽しみにしております。
No Subject * by Hakka
こんばんは。
皇室が質素、清浄にこだわったのは、皇室のプライドというか、武家文化への抵抗みたいなものもあったのでしょうか?
二条城や名古屋城の御殿を観ると、すごいなと思う反面、建築としてはやり過ぎな気がしてしまいます。桂離宮を絶賛して陽明門を酷評したタウトの気持ちがよく分かる気がします。もっとも、彼も自身の日本での作品では結構派手なことをやっていますが…笑
やはり建築はシンプルで美しいのが良いですね。
皇室が質素、清浄にこだわったのは、皇室のプライドというか、武家文化への抵抗みたいなものもあったのでしょうか?
二条城や名古屋城の御殿を観ると、すごいなと思う反面、建築としてはやり過ぎな気がしてしまいます。桂離宮を絶賛して陽明門を酷評したタウトの気持ちがよく分かる気がします。もっとも、彼も自身の日本での作品では結構派手なことをやっていますが…笑
やはり建築はシンプルで美しいのが良いですね。
No Subject * by 京一朗
大原様 コメントありがとうございます。
日本建築の天井の位置づけですけど、建築家によっては書院造りの定型化で天井はあまり顧みられず置き去りにされてきた・・・という見方もあります。正直言って格天井と竿縁との格差が大きすぎて、その間にもっと中間的ないろんな形の天井があっても良かったな、とは思います。日本の場合は住宅は地味目に、一方、社寺で個性を出す、という面があって、おっしゃられるように内陣、外陣に赴きのある変化を与えていますね。
多彩な天井が生まれた近代和風建築が震災で建築規制が入って以降、萎んでしまったのは残念です。
日本建築の天井の位置づけですけど、建築家によっては書院造りの定型化で天井はあまり顧みられず置き去りにされてきた・・・という見方もあります。正直言って格天井と竿縁との格差が大きすぎて、その間にもっと中間的ないろんな形の天井があっても良かったな、とは思います。日本の場合は住宅は地味目に、一方、社寺で個性を出す、という面があって、おっしゃられるように内陣、外陣に赴きのある変化を与えていますね。
多彩な天井が生まれた近代和風建築が震災で建築規制が入って以降、萎んでしまったのは残念です。
No Subject * by 大原かずのり
猿頬天井という名前は知りませんでした。お猿さん高級感ありますね。
天井は面白いですよね。仏堂でも内陣と外陣で分けて作り、内陣をより格式高くしてたり。格式高くても品があり、ケバくないのが日本の天井のように思います。
京都御所から抜け出せないのはやはり、京一朗さんの前世が関係してるでしょう(笑)
天井は面白いですよね。仏堂でも内陣と外陣で分けて作り、内陣をより格式高くしてたり。格式高くても品があり、ケバくないのが日本の天井のように思います。
京都御所から抜け出せないのはやはり、京一朗さんの前世が関係してるでしょう(笑)












日本は何事も花鳥風月の国ですから動植物の名称も多いですね。アメリカだと空母のドナルド・レーガンとか人名もありです。
明治以後、花鳥風月は古いから歌うな、と唱えた詩人もいましたが、披講のように声や楽器に合わせて唱和すると本来の和歌の響きが伝わってくるようですね。現代の日本人ももっと風流を介さないと日本に生まれた意味が薄れていくような気がします。