3D京都

いにしえの京都を3Dで再現します。短歌、史話、公家さんも書きます。

Entries

不自由の美

今、御所の陣座という建物を3Dで作ってます。
そんなにかからないかな、とタカをくくっていたら、屋根に少々手こずってます。屋根の形状がアンバランスなんですね。和風建築の命は「屋根」の表現力なので、木子文庫の指図、一部・立面図を参考に作ってますが、他の建物との寸法合わせや立面図も一方向だけなので、御所で写した写真や写真集などの本とか見て作ってます。

ここをこうすればヨカッタなぁ、とか、もっとスピードアップして作るにはどうしたらいいのかなぁ、と日々試行錯誤してます。
それなりに目も肥えてきて、どうしても精緻に作りたくなる・・・・。この繰り返しかな、と思いますけど、目標に向かって一歩一歩励んでいきます。

さて、3Dが出来上がるまで私の好きな短歌を載せようかな。

その前に、昨日、ふと思ったことがあったので、散文ですが書きます。

「不自由の美」。この言葉は何となくわかる言い回しです。短歌や俳句自体が字数とか制限されていますから、これも不自由ななかでの美の表現とも言えます。

江戸時代の後半、幕府11代将軍・徳川家斉の頃(1829~1844)、将軍の御台所だった広大院の御中臈として仕えていた女性に「桂川てや」という人物がいました。彼女の事績を少し書くと、天保15年5月10日(1844年6月25日)に江戸城本丸の大奥で火事が発生し、奥女中数百人が焼死するという大惨事がありました。このとき、広大院の命で「花町」という上臈を探して参れ、といわれ、手燭を持ったまま火中に入っていきましたが見つからない。かといって主人に「見つかりません」と復命する訳にもいかず、強い責任感から再度、火中に飛び込み命を失った女性です。享年16才の若さでした。後に「大奥の鑑」と讃えられました。

「不自由の美」に繋がるエピソードはここからです。
生前のてやの様子や焼死したときのことなどを、姪が「名ごりの夢」という書物に口述したものが残っていて、

そのなかで、てやが奥医師をしていた父が江戸城に赴くため長袴に着替え、、廊下を歩く姿に惚れ惚れとし、「まるで歌舞伎のよう」と
述懐している部分があります。

長袴といえば、松の廊下で吉良上野介に刃傷に及んだ浅野内匠頭が着用していた姿が時代劇でもよく見受けられます。大名の正装ですが、この長袴、歩くのに大変不都合、足をズリますからね。でも、逆に着こなすととても優雅なスリ足になる。

ちょっと、「桂川てや」のことを書いたのもこれを言いたかったからです。

江戸時代においても、庶民からすれば長袴の井出たちは「現代人の観る歌舞伎」と同じ視線だったのです。
長袴で優雅に歩くにはそれなりの作法と修練がいる。しかし、一端、着こなせば、何ともいえない典雅さが漂う。
これは「不自由の美」以外の何ものでもないと思います。

同じく江戸時代、京の朝廷の女官たちは長袴を穿いていました。一方、江戸城大奥では一部儀式を除き袴を穿くのをやめてしまいました。京女のイメージが「上品」なのも意外とこんな違いから来ているかも。

着物自体が体を締め付ける「不自由」があります。だから、普段着ない。しかし成人式のとき、あの子が?というくらい、しおらしくし見える。

眼を転じてみよう。中国・清朝の時代、上流の女性は纏足をしていました。纏足(てんそく)とは、幼児期より足に布を巻かせ、足が大きくならないようにすることで、当時、小さい足の女性の方が美しい、という風潮だったので何度も禁令がでましたが無くなることはなく近代まで続きました。これも「不自由の美」ですが、一方的に男性視線からみた美です。

維新時、欧米の白人たちは日本武士の堂々とした威儀に驚いています。武士の礼法も、公家、朝廷の礼法も身体に制限をかける「不自由」さから威儀を醸し出していました。白人たちの椅子とテーブルの文化から見れば余計そう見えたかもしれない。

一見、畳の方が自由に見える。しかし、実際は椅子の方が楽。現に和食の店でもわざわざ畳に椅子を置く店が増えている。

畳の上の正座は苦しい。しかし、近世までの日本においては実は正座が一番格式のある座法ではなかった。

最近、ある方の紹介で公家の衣紋道の流れを汲む八条忠基氏の主宰する「綺陽装束研究所」のHPを見ました。

そのなかで、何と胡坐が一番、正式な座法だという。
ただし、現在のように足を組む胡坐ではない。HPの解説によれば「足を組まずに足の裏と裏を密着させるように座ります。膝が左右に張って非常に威儀を感じさせるものです。古い貴人の肖像画などをご覧になれば、まずこの坐法によっているものとわかるでしょう。慣れないと内股の筋肉が痛くなりますが、慣れてしまえば苦になりません」とのこと。

実際、私も試してみましたが足が膝が痛い、筋肉が突っ張る!、といかに運動不足で体が硬いか実感してしまった訳ですが、でも少し鍛えて慣れれば確かに苦にならない気がする。すると、そこで感じたのはこの形での胡坐なら逆に威儀を正せる。下手したら、というよりも玉座に座るよりこの方が威儀がある。権力より権威を感じる。だから天皇は椅子でなく繧繝縁の畳に座られたのだ。私は直観的にそう思いました。

平安時代の衣冠束帯や十二単は実は胡坐に合った装束だった。源氏物語にも座している姿が多いのも唸具ける。

同じ胡坐でも足を組まない制限のある座法。慣れれば威儀が出て背筋も伸び筋力もつく。
一方、現代の胡坐は足を組む。力は要らない。筋肉も使わない。けど猫背になる。
そして楽な椅子に座る。

ここで思った。

日本の文化には制限が多い。その不自由さのなかで日本独自の文化を生み出してきた。

でも、現代の日本において、制限は自由な発想を抑えるもの、としての認識がある。
自由こそ人間の溌剌だと。

私は思う。自由は大切なことだと思う。

その一方で制限があることによって生まれる文化もあると思う。

取り敢えず、私は「短歌」という制限された言葉のなかで、
「不自由の美」を詠んでいきたいと思っている。

長々と書いてしまいました。
短歌を載せるはずでしたが、もう書き疲れた・・・・。
次回にします。
気紛れな自分で申し訳ない。
エッセーと致します。


コメントの書き込み&閲覧はこちらから


ランキングアップします。ポチっと励ましの一押しお願いします!


にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ
にほんブログ村

※ お問合せのメールフォームは左サイドバーにあります。お気軽にどうぞ。

※ ブログに掲載する3DCG、加工済画像等の無断転載は固くお断りします。


関連記事
スポンサーサイト

コメント

NoTitle 

takaさん コメントありがとうございます。
名古屋の香道、調べました。
蜂谷家(志野流)ですよね。土岐源氏の流れを汲む方ですかね。香道というと三条西さんぐらいしか思い浮かばず、takaさんの博識には毎度頭があがりません。

香道の流派ですが聞いてみます。

自分は鼻の感覚が鈍いので実際嗅いでみたらどんな香なのか想像もできません。ましては嗅ぎ分けるとか。そもそも、「嗅ぐ」という字でいいのかもわかりません。

線香の香に似てるのかな?

いろいろと教えて頂いてありがとうございます。

  • 京一朗 
  • URL 
  • 2018年06月27日 23時48分 
  • [編集]
  • [返信]

核心をつく意見ですね 

大変素晴らしいですね。

私自身大変気に入らないですが、それでも認めなければならない部分があります。
それは、日本は中国文化の影響があったからこそ日本の文化の基礎があるという事です。

しかし中国文化について、日本は独自のセンスで取捨選択をしてきたという事実は非常に大きいです。

代表的なのが専門分野でお解りと思いますが、五反田さん も仰られているように 誌の規制ですね。漢誌の絶句・律詩の様な決まりはあれど比較的自由な誌というものは排除され、独自の発展を築きあげています。まあ怨霊信仰の面から、慰霊の為に必死に和歌の文化を築きあげたとも言えますが。

このように日本は江戸時代以前までは、そういう自由と規制、そして外国文化の適切な取捨選択が出来ていたという点が尊敬に値すると思います。

それと座、ですが、戦国江戸時代の女性は胡坐というよりは片膝を立てる座り方が正式みたいですね。確かに胡坐もあったんでしょうが、北政所浅野ねねを始めあの当時の肖像がのほとんどがそれみたいですね。

江戸時代までの日本を学ぶと、現在もてはやされている日本文化というのはほとんどが江戸文化であるとつくづく実感しますね。「髭は闘争心を高めるので禁止」「平和な世界にすぐ立ち上がることが出来るような胡坐はいらない。正座にしろ」、北朝鮮式統治機構の江戸時代はある意味自由さを欠いた時代と言えるかも知れませんね。

話は変りますが、五反田さん の香道はどの流派なんでしょう?
非常に興味あります。

梅村さん は愛知県でしたよね? 名古屋には武家香道の家元が居住していますよ。歴史の連続性では一番長く続いているはずです。
  • taka 
  • URL 
  • 2018年06月27日 12時13分 
  • [編集]
  • [返信]

NoTitle 

五反田猫様

コメントありがとうございます。
私は不器用で「お題を決めるから短歌を作れ」と言われてもできません・・・。何か心に感じるものがあって初めて心情を歌に託す、といった風ですね。平安の歌合せとか、百人一首のカルタと一緒で「何々~」と言うと、すぐさま俊成卿から習った古今和歌集から下の句を扇子で口を隠しながら応えるとか、そんな返歌できませんから、やっぱり平安時代に生まれていたら落第生ですね 笑。

雅楽は伊勢神宮の御神楽が素晴らしいですね。
人長舞というのだそうですけど、検非違使の装束の舞人が舞うのはいいですね。倭舞も。

香道はお線香で代用してます??

足裏胡坐できるよう鍛えねば。
では、今夜はごきげんよう

  • 京一朗 
  • URL 
  • 2018年06月25日 23時41分 
  • [編集]
  • [返信]

NoTitle 

いつも興味深いお話しを有難うございます。 不自由の美、まさに短歌にも共通しており、五七五七七の定型に加え、兼題、返歌など、状況に応じたルールが加わる事で、それを乗り越える事が創造にもつながりますよね。

胡座は、雅楽やお香でも基本姿勢です。 
私の習っている御家流ですと、本香を焚き始めると足を崩せるので、胡座で楽にさせて頂きます。
 しかし、若い人には出来ない人が多く、足の角度が45度以上(両方で直角)、男よりも柔軟性が高い女性でも出来ない人が増えてきました。 畳の生活が無く、椅子が主体だと股関節を使いませんので、当然の事なのかもしれません。 
  • 五反田猫 
  • URL 
  • 2018年06月25日 10時25分 
  • [編集]
  • [返信]

コメントの投稿

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

トラックバック

トラックバック URL
»»この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

左サイドMenu

ブログ内検索

短歌も詠います

短歌一覧はバナーを押して下さい。

タグ一覧


全記事(数)表示

全タイトルを表示

※表示しきれない記事タイトルは「前ページ」で見れます。

プロフィール

梅村京一朗

Author:梅村京一朗
(けいいちろう)、
寝つきの悪い夜は、いにしえの京を想いながら寝ます。すると鼓の音のように京の日々歳々が甦ってきます。・・・浅き夢みし男のブログ語りです。

お問合せメール

名前:
メール:
件名:
本文:

最新コメント

<>+-

ブロとも申請フォーム

アンケート

今日の言葉

京都お役立ち情報

短歌ブログランキング

マーケット情報

QRコード

QR

ブロぐるめLite


写真提供 ホットペッパー.jp
Powered byリクルートWEBサービス
developed by 遊ぶブログ

右サイドメニュー

カテゴリー

openclose

人気ページランキング

開始日:2016/11/6

ブログパーツ

キーワード別記事リスト

月別アーカイブ

カレンダー

06 | 2018/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

検索・買物に利用して下さい

日本史ブログランキング

FC2カウンター

ブログ開設より2017年12月25日までのトータルアクセス数は11万近くを数えました。お礼申し上げます。リセットされた状況は下段に説明しています。

泣く‼ カウンターがリセット!

SSL(暗号化)に対応するためカウンターを一旦削除。再設定したらリセットされ「0」に・・・大泣き‼

2017/12/25日までのトータルアクセス数(一人一日一回のみカウント)は11万近くありました。最近はSSL等の影響でfc2のカウント数と実際の解析によるアクセス数の乖離が大きくなっています。日によりfc2の2~3倍が正味カウント数となっています。2018年を迎えたら、さらに2.5~6倍もの開きになっています。キーワード検索も表示ゼロで、どんな記事、内容に関心があるのか?こちらでも把握できていません。良い記事を書くための参考にしたいのですが・・・残念です。とりあえず現況をお伝えしました。