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3D京都

いにしえの京都を3Dで再現します。短歌、史話、公家さんも書きます。

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あの青い空の波の音が聞こえるあたりに

何かとんでもない落とし物を
僕はしてきてしまったらしい

透明な過去の駅で
遺失物係の前に立ったら
僕は余計に悲しくなってしまった


谷川俊太郎処女詩集「二十億光年の孤独」の中の一篇「かなしみ」から。

この詩は理系の乾いた透明感を漂わせる私の好きな詩の一つです。
「青空」を「青い空」に分けると、その隙間から射ってくる喪失感・・・

新たな「宇宙風のかなしみ」の感覚を謳いあげた谷川俊太郎は
詩を愛好する者ならば誰もが認める現代詩を代表する詩人です。

谷川俊太郎


その憧れの谷川俊太郎の処女詩集「二十億光年の孤独」初版本をとうとう買いました。

20億光年の孤独の表紙1


古本屋さんから届いたその日その時、厳重にプチプチラッピングされていて、
解くのに一苦労。
詩集本はカバー付きのさらにパラフィン包みなので破れないよう
慎重に開梱。ふぅ、開梱にこんなに気をつかったのは初めてです。

本の状態は1952年の初版から65年経っているのに、
シミも少なく良好に保たれています。
カバーも傷は少なく帯もパラフィンも揃っている。

自分で言うのもなんですが、
結構な掘り出し物ではないかと思ってます。

そして緊張するなか第一ページを開く。
で、そこで、不意に「二ページ目をめくったら毀損するのでは?」という不安にかられ、
結局、読んだのは一頁止まり、また梱包して封印してしまいました・・・
何のために買ったのか?
読むためではなかったのか・・・・と自問自答しながらも、
本に触れて、戦後現代詩の黎明期を肌で感じた気分がして
それなりに満足しました。
詩は「文庫本」で読もう。そう使いわけることにしました。

妻にもし封印したままだったら、旅立つ日は棺桶に入れてくれ、と
言うと、「燃やすなんて勿体無い」と言われてしまいました。

私のもう一冊欲しがってる本があります。
歌人の斎藤茂吉の処女歌集「赤光」の初版本。
でも、こちらはもっと高嶺の花・・・
いつかお金がたまったら買おうかなと思ってますけど、
そのときにはさらに値段も吊り上がってはるか先、手の届かない世界に行ってるかも。

今まで本はあくまで実用主義で買ってきましたが、
ここ最近の自分の振る舞いは少し俗っぽいです。
「谷川俊太郎さんが存命中に買おう」などと、不届きな思いが一瞬よぎった訳です。

それはともかく、
私はこの二人の方が近代日本、現代日本に現れたことを感謝しています。
どこか別の世界から吹いてくる風を感じる茂吉の世界。
宇宙から吹いてくる風を感じ取った俊太郎の世界。

いまだ、この二人を越える歌人、詩人は出ていないと私はそう思っています。

付けたしですが、
最近作った短歌を幾つか、


★ 幸せは 車を斜めに 駐めること 理髪店の月曜 クルクルも止まって

とある日、街を車で走っていたら理髪店の店先に車が白線を越え斜めに駐車していた。
「行儀の悪い客だなぁ」と思いながらしばらく走るうち、ハタと気づいた。そうだ、今日は月曜、床屋さんの休日だったぁ!
じゃ、あの行儀の悪い車は店主の車だったんだ。休日を満喫してるなぁ、そう思うと、こちらまで嬉しくなって堪らなかった。

★ 泣きぼくろ 涙袋に 溜めてきた 鏡を見入る 君の肩は小さく

その小さな肩は誰の肩でもない。以心伝心と言わせてください。長きを伴にし苦労をかけ、心配ばかりかけた。
今はもうお詫びのタイミングを逸している。ただ、君が隙を見せる時、私は感謝の気持ちを投げかけている。

★ 甘噛みは 人には出来ない 猫の気持ち 牙を持つから 分かるんだよね

猫は牙があるから人間の飼い主がよくする悪戯にも配慮して甘く噛む。もし牙がなかったら甘噛みはなく、逆に加減がわからず血が出て痛かったかもしれない。牙をむくことがどういうことか猫はしっかり知っている。人間の方が配慮しない牙を持っている。だから戦争もする。人間同士、甘噛みすればいいんだよ、というのは単純過ぎるかな。

★ ナップサックが 三角錐に 揺れている 君の両手は 街リズムに乗って

街中、ナップサックが、ファッションリュックが溢れている。そのなかでも、たまたま目立つナップサックを見かけた。
優雅にコマ送りに揺れている。その巧みなリュック使いは、空いた両手で拍子をとって街をリズムカルに闊歩している。
それは見ていて楽しいことだ。無意識の演劇を見ているようだ。あなたは知っているかい、通り客に有象無象の喜びを与えていることを。私もその一人だ。ブラボー!だよ。

★ 各駅の 指定席無しの こだま号 時間を選ぶより 座る自由

新幹線の荷物棚

たまたま時間の都合で乗ったこだまが全席自由席だった。普段、ホームで並んで待つのはイヤだから指定席券を買う。だから出発一分まえでも優雅に乗れる。それが自由だと思っていた。しかし、お金で買う自由には安心感はあっても開放感はあまりない。各駅のローカル線になったこだま号に乗ったとき、どこに座ろうか迷う事態になって、私は久しぶりの開放感に浸った。

★ モチベーション などとは言わない 昭和生まれ ただ一度だけ 先帝にまみえたり


昭和天皇

昭和天皇が崩御されてからもう30年になる。
確か大喪の礼のときは終日小雨が降っていた記憶がある。まるで清めているような静々とした雨だった。
一度だけ昭和帝を拝見したことがある。まだ私も高校生の頃で沿道沿いに多くの人が日の丸の小旗を振るなか、帝の乗られた御料車が目の前を通り過ぎた。少し雨模様で音もなく静かに過ぎる様は不思議な感覚だった。帝は車のなかで微動だにせず真っ直ぐ前を見られていた。その代わり、皇后様が沿道の人たちに微笑みかけ手を振られていた。昭和天皇は生まれながらの帝王だからとくに国民に媚びるような帝ではなかった。また国民もそれが自然なものと思っていた。だから独自な権威と雰囲気があった。
昭和の時代、とくに戦後の安保闘争の時代、今の団塊の世代と言われる人たちが学生運動の中心だった。今よりも過激な左翼運動だったと思う。また学校でも日教組の力が強かった。進歩的文化人と言われる人たちがマスコミをリードし戦前の日本を軍国主義として否定していた。とにかく左翼思想の強い時代だった。ただ今と違うのは昭和の頃の左翼思想・運動は分かりやすかった。現在のようにカモフラージュしていなかった。

そんな昭和の時代、祝日になると多くの家々で日の丸が掲げられていた。ごく自然に。天皇を現人神とし跪いて拝む人もいた。

左翼思想と戦前からの天皇崇拝が同居した不思議な時代だった。

今の若者からみれば昭和天皇は歴史上の人と思っているけれども、私からすれば今もなお心のなかで大きな位置をしめている。私は昭和生まれだから。だから文芸春秋の「大いなる昭和」を今も大切に持っている。





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