3D京都

いにしえの京都を3DCGで再現します。史話、短歌も詠みます。

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国内最古の寝殿造遺構-宇治上神社拝殿を作ってみました。

京都府宇治にある宇治上神社本殿は国内最古の神社建築として知られ、
建築年代は測定調査により1060年頃のものとされてます。
ちょうど、1052年創建の平等院とも年代が近く平等院の鎮守社としての役割があったように思われます。

さて、今回の3D対象は本殿ではなく、その前に鎮座する拝殿の方です。
拝殿は鎌倉から室町の初期に建てられたといわれ、本殿より新しいですが、それでも現存しない平安時代の寝殿造の雰囲気をよく伝える最古の建築遺構の一つとして、本殿よりも価値が高いかも?です
(以下、クリックすると拡大サイズになります)
宇治上神社拝殿正面写真
(正面からの宇治上神社拝殿)
屋根は優美な桧皮葺で建具も蔀戸や妻戸、低い床と母屋の円柱、また拝殿周りは高欄が囲んでいて、当時の寝殿造は「こうだったんだなぁ」と思わせるものがあります。

あっ!、すみません、写真見ると妻側・側面の戸口は舞羅戸(板の引き戸)になってました!
でも、舞羅戸が拡がるのは鎌倉後期から室町にかけてで、平安時代は扉が開く妻戸でした。
ですから、3D京都はより平安に近いんです・・・はぁ? いいですよね。
宇治上神社拝殿妻側写真
(妻側、側面から見たもの)

それから、天井も平安時代の寝殿造りにはありませんでした。
天井のない化粧屋根でした。で、この格子天井は後世の造作だと思います。

宇治上神社拝殿内部
(拝殿内と格子天井)

後世の修理・改造といえば、この拝殿も例に漏れずです。

明治四十四年解体修理、昭和十八年には屋根葺替を行っています。

拝殿の特徴及び修理報告の記録によれば(日本建築史基礎資料集成 社殿Ⅱより引用)、

宇治上神社拝殿は、本殿の前の一段低くなったところに西南面して建つ。
母屋の両妻にそれぞれ一間の庇をつけた形であって、
母屋の桁行は五間のほかに向って左端に柱間約四尺の一間を付加している(ここに気づかなかった・・・)おり、
梁行三間の横長の建物である。屋根は檜皮葺、入母屋造のような外観であるが、
切妻造の妻に庇屋根を付けて鎚破風をもって連続してこのような形としたのである。

四周に高欄付きの縁をめぐらし、正面中央一間を向拝としてそこに木階七級を設ける。
背面は地盤が高くなっているので石段一級を配するだけである。基壇は低い自然石を用い、
向拝部分のみ切石を用いる。柱は母屋を円柱、庇と向拝を面取角柱とし、母屋四隅の柱と庇の各柱上に舟肘木をのせ、他は直接柱が桁を受ける。向拝柱の上は連三斗を組んで軒桁を受け、
手挾をもち、向拝頭貫上中央に慕股をおく。外まわりの柱間は、正面および背面の中央間に板扉を開き、
その左右それぞれ二間はいずれも蔀戸をつる。

しかし両妻の庇の部分は左右で異なっていて、向って左を壁と引違舞良戸で構成し、
小間の部分のみ格子に裏板を張った扉を前面に設けているのに対し、向って右の庇は、前後を壁とし、
側面に舞良戸および蔀戸を設置する。
縁下がすべて壁でふさがれている点、拝殿建築として珍しい手法といえよう(確かにそうです)。

内部は、母屋と両庇とを分けて三室とする。ただ向って左側の母屋と庇との境は、外見
上は小柱間の外の柱筋で区切られているように見えるが、内部では庇の部屋がこの小柱聞の分も取り込んで、
右側のそれよりも広くなっている。床はすべて拭板敷、天井は中央の部屋を格天井、両側の部屋を樟縁天井とし、内法長押上をただちに蟻壁ふうに造り、天井廻縁を省略している。
各室の境は、中央問に襖を立てるほかは壁で仕切る。

とのこと。

修理の方ですが、

江戸時代が元禄十年(一六九七)、享保九年(一七二四)、寛政元年(一七八九)にそれぞれ行われ、
その後明治四十四年に大幅な解体修理がなされました。

そのときの記録によれば、

解体修理のときかなり大胆に部材を新しい材に取り替えているそうです。おもな部材について記すと、明治の取替材は、母屋の円柱のうちの七本、庇の角柱の半数、向拝柱二本、母屋前面の地垂木の約半数、飛櫓垂木の全部、向拝部分の地、飛櫓垂木のごく一部、打越垂木の大部分、背面の垂木の大部分、舟肘木の約半数、このほか縁まわり、高欄、階段、木負、茅負、木舞裏板、小屋組のすべてが取り替えられました。それ以外もすべて当初材という
わけではなく、中古材がかなり混入していました。

なお当初材とみられる柱には古い仕口の跡がいくつかあり、当初の柱間装置が現状と多少違うところがあったように考えられる。また明治修理の際に、母屋と庇の取りつき部分が若干変更されたらしく、庇の垂木を受ける垂木掛に、現在の垂木の仕口とは別の佃所に古い仕口跡があって埋木が施されている。

向拝の墓股および母屋中央の二対の板扉もまた、明治に取り替えられたものが現在取り付けられているが、旧い墓股と桟唐戸一対は拝殿内に保存されており、もう一つの桟唐戸一対はいま社務所正面の扉として転用されている。暮股は脚部を失なってはいるが、内部に植物文の彫刻が左右対称に配されていたのをうかがうことができる。

残存する肩部や内部の彫刻から推定すると、鎌倉末期から南北朝初期、つまり十四世紀前半ころのものとみてよいであろう。
ただ、これら墓股.桟唐戸による推定により、ただちにこの拝殿の建立年代を示唆するとは考えられない。
前述のように当初材は比較的少ないし、しかも当初材とみられる柱には旧い仕口跡がかなりあるので、部材が移動している可能性も考慮しなくてはならない。

鎌倉時代末ないし南北朝初期ごろ、大改造が加えられたか、あるいはそのころ再建され、再建時に前身建物を利用したということも考えられよう。

とのこと。まるごと引用したら長く、且つ重複してしまいました。すみません。

とにかく、今、頭のなかで、源氏物語の舞台・六条院や藤原氏の氏の長者の本邸「東三条殿」の3D再現を無謀にも思い描いていますが、その、まず足がかり、原点となるものがこの宇治上神社拝殿だと思い、見よう見まねで作ってみました。

ここ宇治の地域は古来より貴族・皇族の別荘や離宮地として知られ、とくに平等院を建立した藤原頼通はここに寺院と住まいの御所を一体化した一大院家建築を造営しましたが、その宇治川の対岸、東側の山裾に位置するのが宇治上神社。

ここ宇治上神社に参篭し体を清め、ちょうど下る方向・宇治川を挟んで西方に位置するのが宇治平等院。

そして、この宇治・木幡近くは古くからの藤原貴族たちの埋葬地でもありました。

建築史家の宮元健次氏によれば、
当時は末法思想による浄土信仰が盛んで、まさしく宇治川を三途の川とみなし、この世の極楽浄土を体現した鳳凰堂、そして阿弥陀仏を川の西岸に拝むことによって、貴族たちは死後、西方浄土の極楽と平安を祈りました。

このような背景から藤原氏と宇治上神社とは宇治川を挟んで深い関係にありました。
宇治上神社地図
(宇治川をはさんで西に平等院鳳凰堂、東に宇治上神社)
この宇治上神社拝殿ですが、
一説には、 鎌倉時代前期に宇治離宮を移築したものとも言われています。鎌倉前期というと、後鳥羽天皇の頃の時期で、藤原氏の没落とともに荒れていた宇治の地を上皇によって新たな離宮が構えられました。

その離宮も藤原定家の明月記によれば、元久二年(1205年)焼失したとのこと。
このとき火災の難を逃れ移築されたのが上記宇治上神社拝殿ではといわれる根拠です。


しかし建築史家の福山敏男氏によれば、明月記に描写されている御所の各建物について、同拝殿の五間二面に相当する建築が見当たらないことから、離宮移築説よりも、むしろ当初から神社建築として建てられた、との考えも出され、いまだ、はっきりしません。

ただ言えるのは、当時の寺院や神社、寝殿造には多くの共通点があり、神社でもあり住宅でもあり・・・と、自分なりに納得するのでした。


今回3D製作するにあたっては、結果的に宇治上神社拝殿のソックリさんそのものではありません。多少自分の想像も入ってます。形も・・・・。

まず、正面階段の庇である向拝と左右の位置ですが、正確には左右の中心からは左に三尺(0.91m)ほど長くなっています。それから両端庇の柱も角柱ではありません。まぁ、細部はともかく全体的にはよく似ている(自画自賛)と思います。
宇治上神社拝殿正面図
(宇治上神社拝殿正面立面図-日本建築史基礎資料集成 社殿Ⅱより引用)

でも、なんで向拝が建物の中心にないのか?不思議です。プロポーション的にも不安定だと思うんですが、やっぱりわかりません。移築のせいかな?

ということで、当然、真ん中だと思い作成した後から気づきました。いまさら直すのも面倒で・・・・。

ということで、今回、向拝の位置が本物と一番違うところです。

そうそう、実際の拝殿は本殿側が斜面で床柱も途中で無くなっていますが、それも平面にある状態で作りました。


後ですね、今回はとくに桧皮葺の屋根にかなり凝って作りました。あまり他には見かけない屋根の形だからです。
拝殿の特徴にも触れてありますが、
普通の入母屋や単なる切妻でもなく、基本・切妻屋根に両サイド妻側に庇がくっ付いていて、その庇が切妻屋根とを鎚破風という反りのあるカーブ破風で繋いでいる・・・というもので、単純なようで実は複雑な屋根構造をしています。

複雑なこの屋根になった理由ですが、
その一つの論拠として、

以前にも取り上げさせ頂いた、川本重雄先生の著書「寝殿造の空間と儀式」の中に述べられている、平安期・寝殿造の屋根の一つの特徴として、それぞれの寝殿や東西の対の庇と中門廊や渡り廊の屋根・庇が同じ軒高で連続している。つまり渡り廊下で繋がれた各寝殿の屋根が庇を介して途切れなく連続して繋がっている、緩やかなカーブがちょうど波のように続いている、そんなイメージかな?
まさしく平安な屋根、平安時代は屋根まで平安な美学を求めたんですね。

連続する屋根(東三条殿)
(連続する屋根-東三条殿、川本重雄先生の著書「寝殿造の空間と儀式」から引用)


今日ですと、社寺を見学すると、渡り廊下の屋根など、母屋(本堂や方丈、拝殿など)の軒下を内側まで伸ばし、それで雨を防いでいる造りが結構多いですよね。
仁和寺御殿廊下
(仁和寺御殿の軒下に食い込む渡り廊下)


改めて、今回の宇治上神社拝殿の屋根をしげしげ眺めると、その平安時代の連続する屋根と、いつでも庇同士でドッキングできる、そんな平安時代独自の屋根構造が今回の宇治上神社拝殿にも反映されていて、その点でも、同拝殿が最古の寝殿造遺構の証拠であり、また平安時代の、連続する屋根の拘りにも敬服した次第です。

でも、実際、単独での建物なら作り易いですが、四季の御所群からなる六条院など、連続した屋根など作れるかなぁ・・・と個人的に心配していて、とりあえず、その「自分は知っているんだよ」というアリバイ作りのため宇治上神社拝殿の屋根を作ったかも???

なんです・・・

では前置きが長くなりましたが、宇治上神社拝殿の3Dパース図の紹介です。
宇治上神社拝殿正面パース図
(正面からの宇治上神社拝殿)

宇治上神社拝殿斜めパース図
(斜め方向からの宇治上神社拝殿)
パース図はこの二枚です。

後、3D動画としては初めてですけど、次回は同拝殿の室内散歩も含めた動画の続編を載せます。
美しい鳳凰堂も拝見できますよ^-^。


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コメント

六条院つくってみました 

ご無沙汰しています。
少しきっかけがあって私は”六条院”をつくってみました。
梅のコージさんの宇治神神社等も参考にさせていただきました。

http://ic-sd.blogspot.jp/

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HP拝見しました 

inagakiさま

コメントありがとうございます。

HP拝見させていただきました。
垂木から組物まで精緻に作成されていて、完成度が高く、いい勉強になりました。

日本建築を3Dで再現する仲間が増えた気分で
とてもウレシク思いました。

自分なんか、細かい所は必要最低限しか作らず、テクスチャで逃げています・・・

しばし、反省です。

今後もお互い頑張りましょう!

               梅のコージ

  • 梅のコージ 
  • URL 
  • 2013年08月09日 00時09分 
  • [編集]
  • [返信]

3Dモデリング 

はじめまして。
歴史的背景からのアプローチがすばらしいです。私はこの4月から3Dモデリングをはじめてみました。もしよければ見てください。

http://www.geocities.jp/inagaki1107/3d-cg-shaji/3d-cg-shaji

  • kazuo inagaki 
  • URL 
  • 2013年08月06日 21時05分 
  • [編集]
  • [返信]

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